この車について
ケーニッヒ・スペシャルが1989年のIAA(ドイツ国際モーターショー)で発表したコンペティションのアップグレードモデルであり、ケーニッヒ テスタロッサシリーズの最終版。

この展示車が日本1号車として最初に輸入された車だった。
発表当時は1,000馬力、最高速370km/hに達することから世界最速のロードカーとして世界中で話題となった。
車の製作期間は半年ほどで本格的に納車が始まったのは1990年からだった。
ボディ素材はカーボンケブラーとなっている。
ほぼすべての車でスペックが異なり、オーナーが自由に選べたことと生産しながら徐々に改良されているため、生産されたタイミングによって若干スペックが異なっている。
コンペティションをベースにアップグレードされた試作段階のボディキットを纏ったコンペティション エボリューションが日本にあったが、アメリカのオンラインカーオークションでコンペティション エボリューション Ⅱとして出品され、約7,600万円で落札された。

唯一サイドエアインテーク、NACAダクトがさらにせり出したように大型化されているのが特徴。
メカニカル
最初はコンペティションのエンジンを改良し、スーパーチャージャー+ツインターボで製作しようとしていたが、重量増、複雑な制御のコンピューターとスーパーチャージャー+ツインターボの排熱、オイル・燃料漏れなどによって故障やエンジンが燃え、焼失する事故が多発したためツインターボのみとなった。※コンペティション エボリューションも5台以上焼失している。
コンペティションではアルベルトがエンジンチューンを担当していたが、今回はツインターボチューンの名手であるローテックによって行われた。 そのため、コンペティションまではエンジンカバーにAF(フランツ・アルベルトのロゴ)が入っていたが、コンペティション エボリューションではKoenig Turbo Competitionの刻印に変わった。

ローテックが設計した1,000馬力を発揮するKCE 1,000 ターボトロニックキットは、燃焼室から再設計され、それ以外にもマニエッティ・マレリ製インジェクション、2基のKKK製ターボが採用され最大ブースト圧1.4barで1,000馬力を発する。それをボッシュのモトロニックによって制御する。※インジェクションはボッシュ KEジェトロニックの車もある。
エグゾーストも新設計され2種類のタイプがあり、低くセンターに2本出しのタイプとその左右にウエイストゲート用の細いアウトレットパイプが1本ずつ備わっているタイプがあった。 ※前者がほとんどだった。
タービンの後ろには消火用のノズルがあり、車内の消化システム作動用の鍵穴に専用の鍵を挿して回すと作動し、消火器からホースを通じてこのノズルから消火剤が噴射される。

足回りはH&Rがコンペティション・エボリューションのために特別設計したショックアブソーバーとコイルスプリングにH&R製ダンパーが採用された。
ブレーキはAPレーシング コンペティションブレーキキットが組み込まれた。
タイヤはピレリ製のものからブリヂストン製(POTENZA RE71)となり、リアタイヤサイズは355/35 ZR17で、フロントは245/40 ZR17がそれぞれOZ製5本ボルトスリーピースアルミホイール(Pegaso)に装着された。ホイールサイズはリア 12.5J×17、フロント8.5J×17となった。
初期に生産された数台のモデルとコンペティションをベースにアップグレードされた個体は、センターロックホイールの個体も存在する。


ホイールはゴールドスポークとシルバースポークのものが選べた。
デザイン
エクステリアはコンペティションから変更されていないように見えるが、リアフェンダー上にあるインタークーラー冷却用のNACAダクトが大型化され、テスタロッサをベースにデザインされていたフロントバンパーはエボリューションでは新設計された。

新設計されたフロントバンパーは、より曲線的なデザインになり、センターにあるエアインテークは大きくなり、左右のブレーキ冷却用のインテークはコンペティションよりも上に備わった。

インテリア
インテリアはテックアートが担当した。
標準装備となったのはロールケージ、4点式ハーネスベルト、LCDディスプレイ、ケンウッド製のHi-Fiシステム、エンジン消火システム。

LCDディスプレイには水温、油温、タービン温度、ブースト圧、エグゾーストパイプ左右の排気温度、ブーストメーターで選択した馬力、燃料計などが表示される。


ケンウッド製のHi-Fiシステムは、電子チューナー内蔵のCDプレイヤーに総出力1,000Wのアンプが組み合わされている。
サイドシルにはCompetitionと記されたサイドプレートが装着された。
※コンペティションからアップグレードされた個体などはこのサイドプレートが装着されていない車もある。

コンペティションと同様にブーストコントローラーがセンターコンソールにあるが、コンペティションエボリューションでは樹脂製になった。 ブーストコントローラーでは4段階でブースト圧(馬力)を設定でき、「600→700→800→1000」がスタンダードだが、初期に生産された一部のモデルでは「600→750→900→1000」になっている。

スペック
| エンジン | Tipo F113A/F113B 4.9L(4,943cc) 180°V12 DOHC 48バルブ ツインターボ |
| 最大出力 | 1,000PS(6,700rpm)/940Nm(4,500rpm) |
| 最高速度 | 370km/h |
| トランスミッション | 5速MT |
| 駆動方式 | MR |
| 0-100km/h | 約3.4秒 |
| 車重 | 不明 |
| 生産期間 | 1989年~1992年 |
| 生産台数 | 25台以上 |
| ベース車両 | テスタロッサ |
| 先代 | ケーニッヒ コンペティション |
個人的見解
ケーニッヒのテスタロッサシリーズで一番市場に出回ってはいるもののECUが故障していたり、エンジンが手直しされていたりとオリジナルを維持して残っている個体はほとんど存在しない。
しかし、焼失している個体がある事を考えると手直しされていてもさほど金額的には変わらない。
つい数年前まで2,000万円~3,000万円で取引されていたことを考えると、今の1億円~2億円ほどの取引価格はようやく過小評価されていたケーニッヒが再評価され始めたのではないかと思うのと、一生をかけても手に入れることが難しい車へと同時になってしまった。

