この車について
1988年のジュネーブモーターショーで30台限定で発表されたテスタロッサ ツインターボのアップグレード版。
車の製作期間は半年ほど。
ボディ素材はカーボンケブラーとFRPが選べたがフルコンプリートカーのほとんどがカーボンケブラー製であった。
革を多用したエグゼクティブと内外装で様々な軽量化を施したライトウェイトの2つの仕様がある。
複雑すぎるコンピューター制御とツインターボ+スーパーチャージャーチューンによる排熱問題、パワーがある事によりホースやパーツ類が耐えられなかったりと燃焼・焼失事故が多発した。そのためか、現在ではケーニッヒのホームページではツインターボのみの1,000馬力と710馬力しか記載されていない。
メカニカル
テスタロッサ ツインターボのエンジンは、発進時のターボが効き始める前の低回転域(3,000rpm以下)のトルクがないことが課題だった。そこでアルベルトは、低回転域のトルクを補うためにベルト駆動のアルブレックス・スーパーチャージャーを設計、開発し、ラジェイ製ターボと組み合わされた。
低回転域からブーストを発生させることがスーパーチャージャーの利点だが、高回転域の出力はまりよくない。その欠点を解決するために、ターボが作動し始めるとアルブレックス・スーパーチャージャーをマグネットクラッチによって切り離し、継続的にハイブーストを得られるようにした。
※発進の3,500rpm以下時のみスーパーチャージャーが作動する。それ以外は全てターボが補う。
この工夫により、テスタロッサ ツインターボの課題だった低回転域を克服し、7,500rpmまでクリーンにブーストが得られるエンジンに進化した。 そして、ハイブーストに耐えられるように、ギアリングも高くした。
ターボは最大ブースト圧1barに設定され、最大ブースト時に800馬力を発揮する。

アルベルトは、ブーストの改善だけでなく燃焼室の再設計も行った。マーレ製ピストン(圧縮比7.8:1)を採用し、オイルラジエーターとウォーターラジエーターは大型化され、ギアボックスには専用のオイルクーラーが装備された。この冷却システムはテスタロッサよりも50%大型化されたている。
ターボにF1カー用に開発されたものと同様の水噴射システムを採用し、エンジンの上には水冷式インタークーラーを搭載した。また、水冷式ヒートシンクがエンジン上に設置されている。
車の後部にある2つの空冷式インタークーラーを流れる予圧縮された空気は、約40℃冷却される。
消火システムがあり、車から炎が上がった場合、自動的に作動して車内およびエンジンルームに消火剤が散布される。
エグゾーストシステムも改良され、センター2本出しとなり、その左右からウェイストゲート用の細いアウトレットパイプが一本ずつ備わっている。

足回りにはKONI製ダンパーとショートデュアルレートスプリングが採用された。
速さだけを追求するのではなく、サーキットでの走行を考慮し、ブレンボが設計したディスクと4ピストンブレーキキャリパーを備えたブレーキシステムが組まれた。
※APレーシングブレーキキットが組み込まれている車もある。
リアタイヤはF40用に設計された355/35 ZR17ピレリPゼロタイヤで、フロントは245/40 ZR17がそれぞれOZが専用設計したスリーピースアルミホイール(Pegaso)に装着され、ゴールドスポークとシルバースポークのものが選べた。
生産途中でセンターロックホイールから5本ボルトタイプのホイールへと変更された。

デザイン
テスタロッサ ツインターボのボディキット(Ver. Ⅱ)、コンペティション専用のボディキットが選択可能だった。
※Ver. Ⅱエアロの個体は1~3台程度しか製作されていないと思われる。
コンペティション専用のF40オマージュのボディキットは、ハイブーストのエンジンに耐えれるように空力が強化された。
フロントバンパーは、テスタロッサ ツインターボでは左側にしかなかった小型エアインテークが左右に備わった。そのため、288GTOのフロントバンパーを意識したようなデザインとなっている。


また、コンペティションからCピラー上にもエアインテークが設けられた。
リアデザインは新しくなり、F40を意識したデザインとなった。F40のようなウイング、透明なプレキシガラスでできたエンジンフードなど。
生産初期のモデルではサイドエアインテークからラジエーターがむき出しとなっていたが、生産途中でサイドエアインテークの開口部にサイドストレークが追加された。

~インテリア~
インテリアの張替えはポルシェのチューンで有名なテックアートが行った。
コンペティション専用のメーター、ロールケージ、シュロス製4点式ハーネスベルト、モモ製ステアリングは標準装備となった。
※初期のエグゼクティブモデルでは、4点式ハーネスベルトがついていないものも存在する。
ライトウェイトでは、レカロ製アルカンターラレーシングシート、フロントウインドウ以外は全てポリカーボネートとなり、サイドウインドウはレースカーのようにスライド式に。内張りも軽量素材となった。また、サーキット走行を考慮してフルロールケージが組まれる。
センターコンソールには金属製のブーストコントローラーがあり、最大1barまで設定可能。


エグゼクティブでは軽量化ではなく内装の華やかさに重点を置いているため、ステアリング、ダッシュボード、シート、内張りなど見えるところすべてが革で仕上げられる。
電動調整式シート、テスタロッサ純正の電動サイドウインドウなどもエグゼクティブには含まれている。

スペック
| エンジン | Tipo F113A/F113B 4.9L(4,943cc) 180°V12 DOHC 48バルブ ツインターボ スーパーチャージャー |
| 最大出力 | 800PS(6,700rpm)/900Nm(5,000rpm) |
| 最高速度 | 350km/h |
| トランスミッション | 5速MT |
| 駆動方式 | MR |
| 0-100km/h | 約3.5秒 |
| 乾燥重量 | 1,350kg(ライトウェイトver.) |
| 生産期間 | 1988~1992年 |
| 生産台数 | 10台以上(コンペティション エボリューションへアップグレードされている個体も存在) |
| ベース車両 | テスタロッサ |
| 先代 | テスタロッサ ツインターボ |
| 後継 | ケーニッヒ コンペティション エボリューション |
個人的見解
この車に関しては、ケーニッヒのテスタロッサシリーズの中で1番情報がなく、市場にも出回っていない。ツインターボ+スーパーチャージャーという現代においても斬新なチューニングであったが、タービンなどの発熱とホース類の故障などが重なり焼失した個体と、複雑なプログラムのECUとチューニングのため不動になっている個体しか存在しないと思われる。数年で焼失した個体が数台存在すると思われ、現在ではケーニッヒのウェブサイトにもツインターボ+スーパーチャージャーのチューニングは記載されていない。
1000馬力を誇るコンペティションの後継のコンペティション エボリューションは現在でも有名だが、このコンペティションを知っている人は少ない。
30台限定で販売する予定だったが、実際には30台分の注文がなかったため実際に製作されたのは15台程度だと考えられる。
市場にも出回っていないため現在の価値が全く分からないが、コンペティション・エボリューションよりも希少なため、2億近い価格がつく可能性もあり得る。

