Testarossa|テスタロッサ

この車について

1984年10月開催のモンディアル・ド・ロトモビルで発表された。フラッグシップモデル512BB(i)の後継モデル。

Mondial de l’Automobile 1984

テスタロッサを直訳すると「赤い頭」という意味でシリンダーヘッドカバー(カムカバー)が赤いところからきている。テスタロッサという車名は1950年代~1960年代のレーシングカーである250TR(TRはテスタロッサの略)、500TRが由来であり、テスタロッサの名はその復刻(オマージュ)である。

ヨーロッパモデルの最大出力が390HPであり、北米モデルは排ガス対策によって380HPになっている。そのため、1速・2速のギア比が低くなっていて、最高速度も異なる。日本では北米モデルが正規輸入された。

エンジンルーム

現代のフェラーリは女性でも乗りやすい車をコンセプトに入れているモデルもあるが、この車もその例に漏れず、誰でも乗りやすいという似たコンセプトが開発段階にあった。スーパーカーではあるが、居住性を考慮しているグランドツアラーなモデルでクラッチも重すぎず、トランスミッションも癖が少なくできている。ステアリングはラック&ピニオン機構でパワーステアリングが装備されていないため、重めである。

重心が車体の中央に保たれているため安定性があり、40(フロント):60(リア)という理想的な重量配分が取れているが、エンジンが高めの位置にマウントされてて、重心が高いためコーナリング性能は高くないのがデメリットである。
ドライブシャフトは軽自動車並みに細いため、酷使しすぎると折れる可能性もある。

~デザイン~

デザインはピニンファリーナが担当。ドアからリアフェンダーにかけて巨大なエアインテークがあり、そのインテークにかけて特徴的なフィンが5本ついている。

フィンがついた理由は、車の開口型の大きなエアインテークを禁止しているいくつかの国があり、装着された。海外ではこのフィンは、「エッグスライサー」や「チーズグレーター(チーズおろし)」と呼ばれることもある。そのサイドにフィンがついたデザインは、後継の512TR、その後継であるF512Mにまで受け継がれ、V8エンジンモデルである348にもそのデザインが反映されていくことになる。ボディサイドのフィンとそこからリヤへと続くワイドなフェンダーラインは、芸術そのもの。

~年式による違い~

前期型(1984年-1992年)

ドアミラーが運転席側のAピラーの中央部に取り付けられ、助手席型にはミラーがついていない。ホイールはセンターロックタイプ。

ミラーが片側にしかないことから、モノスペッキオ(Mono Specchio、イタリア語でシングルミラー)や、英語圏ではフライングミラーと呼ばれている。

後期型(1988年式-1992年式)

ホイールがセンターロックから5本ボルトタイプに変更。前後サスペンションのアッパーアームとロアアームの形状を変更し剛性が上がった。ダンパーはややマイルドに。

前期型・中期型で輸出先によってキャタライザーが未装着だったが、後期型では全車に装着された。

その他違い

初期型・中期型はタイヤとホイールが輸出先により異なる。

ヨーロッパモデルではミシュランTRXタイヤを装着させていてるため、ホイールはミリ企画を採用。ホイールサイズはフロント210TR415、リア240TR415、タイヤがフロント240/40VR415、リア280/40VR415となる。

北米モデルでは通常のインチ規格で、ホイールサイズはフロント8J×16、リアが10J×16である。タイヤがグッドイヤーのイーグルで、フロント225/50ZR16、リア255/50ZR16が装着されている。

~特捜刑事マイアミ・バイス~

映画「マイアミ・バイス」で白いテスタロッサ(元は黒)を運転していたドン・ジョンソンは、マイアミ・バイスのファンだったエンツォ・フェラーリ本人から1989年式のシルバーのテスタロッサが贈られた。この映画のエグゼクティブ・プロデューサーであるマイケル・マンも、特別色のブルーメタリックのテスタロッサを所有していた。

Testarossa Spider(テスタロッサ スパイダー)

フィアットの代表を務めたジャンニ・アニェッリが就任20周年記念として作られたワンオフカー。フェラーリが正規で製作したテスタロッサ唯一のオープントップモデルである。

ジャンニ・アニェッリのイニシャル、GAをもとに元素記号のAgとかけて、シルバーに塗られている。ボディーカラー、ボディ下部などのところどころにあるブルーストライプは、ジャンニ・アニェッリがオーダーした。

他にもスパイダーモデルがあるが、フェラーリの公式モデルではなく、他会社(コーチビルダー)の手によって作られたモデルである

スペック

エンジンTipo F113A(前期のみ)、 F113B 4.9L(4,943cc) 180°V12 DOHC 48バルブ
最大出力380PS(5,750rpm)(NA仕様)
390PS(6,300rpm)(EU仕様)
トランスミッション5速MT
駆動方式MR
最高速度290km/h(NA仕様)
300km/h(EU仕様)
0-100km/h約5.8秒
重量1,510kg(前期)
1,630kg(中期)
1,660kg(後期)
ホイールベース2,550mm
デザイナーピニンファリーナ
販売期間1984年~1992年
生産台数7,176台 (クーペ)
1台 (スパイダー)
先代512BB(i)
後継512TR

乗っていた有名人・乗っている有名人

日本では、元プロ野球選手の山本 昌、清原 和博、俳優の近藤 真彦などがいる。

オーストリア人F1レーシングドライバーのゲルハルト・ベルガーが乗っていた。

この車について(乗っていた人に聞いたこと)

フェラーリの中でも癖がなく、一番楽しく乗れるといっても良い車。居住性もいい。

個人的見解

フェラーリで一番好きなモデルの一つである。ドアはフィンがついているためか、重い。

現代のスポーツカー、スーパーカーは車重が増えたりしてしまう無駄なものをつけない、ミニマリズム的なデザインをしている車が多いと感じる。しかし、この車は、ボディサイドにフィンがついていて、とても個性的でピニンファリーナの遊び心を感じる。テールライトにもフィンを模したようなラインが入っている。そういった総合的なデザインがとても美しく、デザインにこだわるエンツォ・フェラーリの気持ちが感じられる1台だと思う。