この車について
1985年にフランクフルトで開催されたIAA(ドイツ国際モーターショー)で発表された。

最終的には3台が710馬力のフルコンプリートカーとして製作され、テストカーが数台存在する。
この車の製作期間は半年ほど。
日本に一番最初に輸入されたケーニッヒである。
710馬力のテスタロッサ ツインターボは、0-100km/hを約3.8秒で駆け抜け、最高速度は340km/hに達する。
この性能は1980年代当時、「世界最速のロードカー」の真っ当な候補だった。
メカニカル
いつものごとくヴィリー・ケーニッヒは、テスタロッサの性能に満足していなかった。
もっとスポーティにするため、フランツ・アルベルトの協力の元180°V12エンジンを航空機用ラジェイ製ラージターボでツインターボ化した。
ターボはブースト圧0.8barに設定された。

フランツ・アルベルトの設計によりECUチューン、新しいエグゾーストシステム、冷却システムを大幅に改善することで、エンジン単体の馬力で710馬力を達成した。
エグゾーストは当初はオリジナルのテスタロッサに非常に似た4本出しのものだったが、IAA発表時には左右2本出しのエグゾーストになった。
KONI製ダンパーと専用スプリングを備えた特別設計されたスポーツサスペンションが採用され、よりレーシーな乗り心地になった。
また、パワーアップに伴いブレーキシステムもアップグレードされ、APレーシング製の特別設計レーシングブレーキシステムが備わった。
デザイン
710馬力を維持し、そのパワーを路面に伝えるためには、エアロダイナミクス(空力)の調整も必要不可欠だった。
ヴィットリオ・シュトロゼックは、ケーニッヒ・スペシャルらしく見せるためのラインを描いた。Ver.ⅠボディキットとVer.Ⅱボディキットが存在し、Ver.Ⅱではテスタロッサのサイドストレーキが取り外されている。
サイドスカートは再設計され、巨大なサイドエアインテークが姿を現し、リアはケーニッヒ・フェラーリらしくワイドになり全幅は2,150mmになった。
フロントエンドには新しいフロントバンパーが導入され、より低く左側にのみ小型エアインテークが設けられた。
オリジナルのリトラクタブルライトは廃止され、プレキシガラスで覆われた固定式のものに変更された。

テスタロッサのウイングミラーは、他のケーニッヒの車と同様の小型のものに変更された。
リアは、512 BB(i) ツインターボと同様に、ダックテールスポイラーによってロングテール化され、ケーニッヒ製の低めのウイングが装着された。
リアバンパーはエアアウトレット用のスリットが左右に2段ずつ備わり、その下にもう1つスリットが斜めに設けられた。

リアフェンダーの上にあるNACAダクトは、インタークーラーへと通じており、後部のスリットから排出される。

ホイールはBBS製3ピースレーシングホイールとOZ製3ピース5本スポークを装着した車が存在する。タイヤは、ピレリ製でリアが345/35 ZR15、フロントが225/50 ZR16だった。
日本にあるテスタロッサ ツインターボ
1987年に日本にファーストデリバリーされた車のファーストオーナーは女性だった。この日本ファーストデリバリー車は、1988年1月に開催された東京オートサロンにてグランプリを受賞した。

2024年5月現在、日本ファーストデリバリー車はビンゴスポーツが所有している。
2024年7月28日のBH AUCTION at CITY CIRCUIT TOKYO BAYで¥46,090,000で落札された。
ビンゴスポーツの写真を見ると、フェラーリのエンブレムからケーニッヒスペシャルのエンブレムに変えられているのがわかる。シートもレカロのバケットシートに変えられている。
また、2オーナー目である中村エンジニアリングによってチューニングが施されていて、ターボや排気系、足回りも異なる。


スペック
| エンジン | Tipo F113A/F113B 4.9L(4,943cc) 180°V12 DOHC 48バルブ ツインターボ |
| 最大出力 | 710PS(6,300rpm)/845Nm(5,100rpm) |
| 駆動方式 | MR |
| トランスミッション | 5速MT |
| 最高速度 | 340km/h |
| 0-100km/h | 約3.8秒 |
| 生産期間 | 1985年~1988年 |
| 生産台数 | 3台(Ver.Ⅱ) 1台(Ver.Ⅰ) +2〜3台?(詳細不明、650PS or テストカーの可能性あり) |
| デザイナー | ヴィットリオ・シュトロゼック |
| ベース車両 | テスタロッサ |
| 先代 | 512 BBi ツインターボ |
| 後継 | ケーニッヒ コンペティション |
個人的見解
テスタロッサに筋肉増強剤を注入したかのようにボディは大きく、より高出力になっているが、元のテスタロッサのいいところを崩さないのは流石。
価値は絶対下がらないため、買えるんだったら買ったほうがいいと思う。しかし、ケーニッヒは部品の生産を行っていないため、リアウイングなどの部品を新品にしたいと思っても交換できないため、乗る車というよりも資産や観賞用として大切に保存したほうが希少価値、歴史的価値は上がると思う。
ケーニッヒ・スペシャルが組み立てた車なのか、個人で部品を買い、ケーニッヒ仕様にしたのかの見極めが外観だけでは難しい。最初に生産された車がどこにあるのかがわからないため、詳しい情報を知りたい。
エンジン単体の馬力は710馬力だが、駆動系などでのロスを考えると実際の馬力は500馬力程度だそう。

